タイのあれこれ

と、フィリピンのあれこれも

スリだ!

 

フィリピンに来て、初めてスリに遭いました。

小雨が降っていたので、雨の当たらない場所で手に持っていたものを降ろしていた時に、突然、体の横を押し付けてくる圧力を感じ、私の右ポケットの部分に上着をかぶせてきて、同時にポケットの中に手が入ってきました。そして、その直後に隣りにいた妻の叫び声が聞こえ、声と同時に振り返ると、私のすぐ隣に若い男がいることに気づき、それとほぼ同時に、私はポケットをまさぐっている手を振り払っていました。私は、荷物を降ろす時に左のポケットにスマホを入れましたが、スリの手が入ってきたのは右のポケットで、そこには何も入っておらず、男は何も取ることはできませんでした。私が彼の顔を睨みつけると、彼はびっくりしたように私と目を合わせました。そして、私が大きな声を上げると、ひるんだ様子で逃げ出しました。逃げるものを見ると追いかけたくなるのが人の性で、気が付けば私も彼の後を追っていました。彼は、道路を横切り、中央分離帯をよじ登って隣りの車線を逆走して走っていき、私も彼の5メートルくらい後ろを走っていきました。ゆっくり走る対向車をよけながら走っていく彼を私は大声を出し続けて追いかけていき、彼は再び中央分離帯を登って元の車線を走り、履いていたサンダル手に持ちかえて裸足で走っていきました。彼は、止まっていたジープの後部座席に飛び乗ったり、そこから出てその隣りのジープの陰に隠れたりしましたが、その分、私と彼との距離は縮まり、歩道近くで追いついて、私は彼の手を捕まえました。私は、走る間も捕まえた後も、とにかく大きな声を出していたので、その声を聞いて一人の男の人が近づいてきて、彼を取り押さえてくれました。現行犯逮捕成立です。なんと、その人は非番の警察官でした。そうこうしているうちに、近くに停まっていた警察の車から二人の警官が駆けつけてくれました。このすべては、ものの2,3分の出来事でした。

後から考えると、何も取られていないのだから、追いかけなくてもよかったし、彼が刃物などを持っていたらもっと大事になっていたかもしれないなと思いますが、とっさにその場にいて、自分に悪いことをした人がひるんだ表情で逃げ出すと、反射的に追いかけてしまうんだなと実感しました。相手は、「ただ小銭を恵んでもらおうと思っただけだ」「あいつは意味が分かっていない」と逃げながらもずっと言い訳を続けていて、それにカチンと来ていたというのも事実です。『ポケットに手を突っ込んできて、それでいてただ小銭を恵んでもらおうとした、だと!?』という気持ちがめらめらと湧き上がってきて、私の走りを加速させていました(笑)。そして、自分でもよくあんなに大きな声が出たなと思うほど、ずっと声を出し続けていました。しかも、タガログ語で。私のテンションはマックスの状態で、捕まえた後もずっと大声を出していたので、駆け付けた警官から、「路上で大声を出してはいけません」とたしなめられました。いやぁ、でも、あの状況だったら、声を荒げるよな、普通の人は。そう、わたしは、ただの普通の人だったということを痛感させられました。まだまだ修行が足りませんね。警官は、ここで話していてもらちが明かないのでオフィスにいこうと言われ、彼はピックアップの車の後ろに、私は助手席に乗せられ、近くの警察のオフィスに行きました。私は簡単なレポートを書かされました。警官は、犯人の扱いについて質問してきました。たぶん、「訴えますか?それとも、犯人は未成年なので、施設に引き渡しますけど、それでもいいですか?」みたいなことを言われました。私は、皆さんに任せますけど、普段はどうなるのですか?と聞いたら、「何も物を取ってはいないので、訴えるのは難しいけど、犯人はこちらの質問にもまともにこたえられないみたいなので、病院に送るのが一番いいでしょうね」と言われました。どうやら、自分の親の名前も話そうとしないし、誕生日も答えられなかったとのことでした。何かメンタルの問題があると警官は判断しているようでした。確かに、警察のオフィスに着いた後も、「ただ小銭を恵んでもらおうと思っただけだ」「あいつは意味が分かっていない」と延々と繰り返していましたので、ちょっと正常ではないのかもしれません。警官に、この犯人の男を知っているかと言ったら、知っていると答えていました。以前もここで保護したことがあったようです。まだ若い人でしたので、更生するチャンスがあれば立ち直ってほしいと思いますし、明らかに地元の人ではなくほかのエリアからきている人だったので(彼はタガログ語しか話さず、興奮していても、地元の言葉は一切口から出てきていませんでした)、少なくともここからは追い出してほしいと思い、施設に引き渡してもらうことにしました。その後、警官が何が起こったかを簡潔にまとめたレポートを作成し、それに間違いがないか確認した後、サインをして、私は警察のオフィスを離れました。

海外は犯罪が多い、危険だ、とはよく聞かされていましたが、今回が初めて直接犯罪(未遂でも犯罪ですよね)を体験しました。(グループ旅行中に、旅仲間が目の前でスリ集団にもみくちゃにされているのを見た経験は、有り。20年以上前に。)別にこれでフィリピンが嫌になってしまったとか、帰国したくなったということはないのですが、やはりポケットに貴重品を入れるのは危ないということは分かりました。そして、今回の一番の教訓は、【追いかけてはいけない】ということだと思います。悪いことをしている人を許せない性格が災いしており、どうしても自分をコントロールできないことがあるんですよね。ハイ。横断歩道の上に停まっている車のボンネットを、通りがかりにノックしたりとか。妻に「撃たれるよ」と言われました、ハイ。本当に、課題ですね、これは。義憤と言えば聞こえがいいですが、ある意味、他の人を見下す傾向の表れとも言えるので、何とかしないといけません。今回は何も被害に遭いませんでしたが、下手な行動で自分の命を危険に晒すことはしないよう、しっかり注意していきたいと思います。